2022年8月、乳がん発覚。
初期ながら、手術→追加手術→放射線治療(5週間)→ホルモン剤治療(5年程度)が始まります。
無職の私が1番に調べたのは、高額医療費の制度と、加入している生命保険の申請方法についてでした。
高額医療の制度については、勘違いしている部分もあったので、まとめておきたいと思います。
高額療養費と医療費控除と限度額適用認定書
がん告知の後、手術に向けた追加検査等の説明の後、看護師さんからは「限度額適用認定書の申請」について案内がありました。
私は「なんか見たことあるな。10万円以上医療費がかかったら窓口で支払わなくていいヤツね」という、ぼんやりした認識でした。
所得税申告時の「医療費控除(所得控除)」にイメージが引っ張られて、10万円という金額が思い浮かびました。
が、全然違う制度で計算方法も全く違うので、改めて整理したいと思います。
医療費控除とは、所得税が(確定申告時で)控除される制度
- 納税者がその年の1月1日から12月31日までの1年間で一定金額以上の医療費を支払った場合に申告すると、所得税等が軽減される制度です。
- 医療費控除は、確定申告の際に税務署へ申告書を提出します。
- 医療費控除の対象となるのは、多くの場合、支払った医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の方は、総所得金額等の5%)を超えた場合です。
- 医療費控除には、保険適用外の医療費や通院にかかったタクシー代等も含まれますが、後から出てくる「高額療養費」として支給を受けた金額や、生命保険等から給付を受けた金額分は除いて計算する必要があります。
高額療養費とは、ひと月に一定額を超えて支払った医療費について健保組合等から払戻しされる制度
- 月初から月末までの1か月で、一定の金額(自己負担限度額)以上の医療費を支払った場合に、自己負担限度額を超えた金額が健康保険から払い戻しされる制度です。
- 高額療養費の対象となるのは、保険適用となる医療費のみです。保険適用外の差額ベッド代や食事療養費の自己負担額等は対象外です。
- 高額療養費は、加入先の医療保険者(健康保険証を発行している機関)へ申請書を提出します。
- 自己負担限度額は被保険者の年齢や収入、直近1年間に高額療養費の支給を受けた回数等によって、異なります。
- 事前に「限度額適用認定証」を病院に提示すると、保険適用となる医療費に関して、窓口で支払う金額が自己負担限度額までとなります。
限度額認定適用証とは
- 医療費が高額になった場合は、後から健保組合等へ申請し、自己負担限度額を超えた額の払い戻しを受ける「高額療養費制度」がありますが、「限度額認定適用証」を保険証と併せて医療機関等の窓口に提示することで、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。
- 申請された月より有効のため、できるだけ治療開始(入院)翌月にならないように、入院前に申請するようにしましょう。
- 『限度額適用認定証』の有効期限は、発行日の属する月より原則1年です。
- 医科歯科別・入院外来別の適用となるため、同月に入院や外来、または別の医療機関など複数受診がある場合は、高額療養費の申請も必要になる場合があります。
自己負担限度額の計算方法
国民健康保険・協会けんぽ(70歳未満の方)
所得区分 | 参考給与年収 | 標準報酬月額 | 自己負担限度額3回目まで | 4回目以降 |
ア | 約1,160万円以上 | 83万円以上 | 252,600円+(総医療費 -842,000円)✕1% | 140,100円 |
イ | 約770万~約1,160万円 | 53~79万円 | 167,400円+(総医療費 -558,000円)✕1% | 93,000円 |
ウ | 約370万~約770万円 | 28~50万円 | 80,100円+(総医療費 -267,000円)✕1% | 44,400円 |
エ | 約370万円未満 | 26万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
オ | 住民税非課税世帯 | 住民税非課税世帯 | 35,400円 | 24,600円 |
加入している健保組合、年齢によって異なります
複数の医療機関を受診した場合や同じ世帯の(健保)扶養家族分の合算について
同一の医療機関等における自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えないときでも、同じ月の複数の医療機関等における自己負担(70歳未満の場合は21,000円以上であることが必要)を合算することができます。この合算額が負担の上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となり、申請することで、払い戻しを受けることが可能です。
医療機関等に支払った同一月の自己負担額(保険外診療の費用や入院中の食事代等を除く)を、受診者、医療機関、通院・入院、医科・歯科ごとに分け、21,000円以上のもののみ合算し、高額療養費を計算します。
具体的な計算例
上記のように、自己負担限度額の計算は、単純に保険適用の医療費全てを1か月分合算して決まる訳ではありません。
複数の医療機関を受診した場合や、(健保)扶養家族分の医療費を合算するには、計算ルールがあります。
1.まず医療費の領収書を以下の条件に応じ、分類する
① 受診者ごと
② 医療機関ごと
(院外処方せんにおける薬剤費等は、その処方せんを発行した医療機関における自己負担額と合算可能)
③ 医科ごと、歯科ごと
同一医療機関でも医科と歯科の医療費は別扱い
④ 入院ごと、外来ごと
同一の医療機関の同じ科にかかった場合でも、入院と外来の医療費は別扱い
夫 (43歳) 所得区分:ウ 医療費3割負担 | A病院(外来)自己負担額21,000円(医療費総額70,000円) B病院(外来)自己負担額20,400円(医療費総額68,000円) B病院(入院)自己負担額450,000円(医療費総額1,500,000円) |
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妻(43歳) 被扶養者 医療費3割負担 | A病院(外来)自己負担額30,000円(医療費総額100,000円) |
2.21,000円以上の自己負担額を世帯単位で合算する
同じ夫のB病院の外来分は、自己負担額が21,000円未満なので、計算には含まれません。
3.世帯全体の医療費総額から自己負担限度額を計算する
4.世帯全体の自己負担限度額を計算する
5.世帯全体の払い戻し額を計算する
6.実際の自己負担額
上記の計算によって、406,870円が払戻しされることになりますが、夫のB病院の外来分は、自己負担額が21,000円未満なので、計算には含まれません。
そのため実際の自己負担額は、94,130円+20,400円=114,530円 になります。
妻の自己負担額が21,000円以上で無ければ、実質もっと医療費がかかるようになります。
※1世帯の高額療養費対象者に70~74歳がいる場合は、計算が異なります。
高額療養費の申請期限は2年間。忘れずに!
高額療養費の払い戻しは、健保組合によっては、自動で計算して給付してくれるところもありますが、国民健康保険や協会けんぽは、基本的に申請が必要です。
「限度額認定適用証」を病院へ提出していても、外来と入院は別で計算されるので、同じ月に、同一病院で、入院と通院の両方をした場合は、申請漏れになる可能性が高いです。
また、保険薬局で支払った薬代についても、通常、70歳未満の人はひとつの医療機関の自己負担額が2,1000円を超えないと合算できませんが、高額療養費の対象となった病気の治療で、医師に処方された薬は金額に関わらず合算対象になるので、漏れがないように注意が必要です。
高額療養費の申請期限は診療月の翌月の初日から2年間です。
所得税の還付請求期限(5年間)よりも早いので、申請漏れが無いように注意が必要です。
わたしの場合
8月に同一の病院で外来受診と入院がありました。
入院前に「限度額認定適用証」を提出していたので、入院費用は総医療費(10割)が63万円程度のところ、実際に窓口で支払ったのでは、「自己負担限度額」+「食事療養標準負担額」+「差額ベッド代」すべて合わせて10万円程度で済みました。
また、外来費用についても、追加検査等をいろいろしていたので、上限額を超えたのか、月末の診察時には、窓口で数百円が戻ってきました。
しかし、今の状態では、外来費用と入院費用それぞれで、自己負担限度額まで支払っているため、払い戻しの申請が必要になっています。
そして残念ながら、追加検査のために別病院で受けたMRI費用は、21,000円もかからなかったので、合算はできないようです。
また、今年は所得税も払わずに終わりそうなので、医療費控除を受けることも無さそうです。(去年であれば…)
今後、放射線治療が始まりますが、看護師さんに相談していると、平日5日×5週の25回必要なので、月の中旬から始めて半分ずつ2か月に跨るよりも、なるべく1か月にまとめた方が医療費がお得!という説明をしてくれました。
それに合わせて初回日程を調整してくれるようです。
今まで、年に数回の歯医者でのスケーリング代と、数年に1回程度の眼科や皮膚科でしか支払っていなかった医療費。
今後、がん治療にどれくらい医療費がかかるのか、民間の医療保険の給付金で、ほとんどカバーできるのか、またまとめたいと思います。